YouTubeの動画で藤原先生がよく口にされる「刃先が鋭い」「刃先が丸い」という言葉。
その「鋭い・丸い」の基準が、実は「粒子1個分」というミクロな単位の話であるということは、視聴者の皆様になかなか伝わっていないのではないかと感じています。
実際、多くの人が到達するのは難しい領域の話であるため、それを感覚として理解し、思考に落とし込むこと自体が非常に難しいのも事実でしょう。その結果、コメントをくださる方々と論点が噛み合わなかったり、議論が成立していない場面が多く見受けられます。
私たちは、他の方を批判したり、自分たちの主張を押し付けたりする意図は一切ありません。この記事はあくまで事実に基いて公平な立場で書いており、誰かを否定することも、藤原先生を過剰に持ち上げることもありません。
ただ、このステージで議論を共有し、対話を成立させるためには、少なくともこの要点を押さえておく必要があると考えています。
あらかじめお伝えしておかないと「そのような切れ味は無駄」といった、主旨とは異なる批判を生んでしまう可能性があるため、先に記載させていただきました。
大切なのは「批判」ではなく「議論」であるということを頭に入れておいていただけると、お互いに良い方向に進めるのではないかと考えております。
「刃先が鋭い」「刃先が丸い」
包丁の刃先や切れ味と聞いて、多くの方はこのような図をイメージされるのではないでしょうか。


一般的に「刃先が鋭い、丸い」と言えば、指で触れたり目で見たりして分かる範囲の状態を想像される方が多いと思います。
しかし、私たちが定義している「鋭い・丸い」は包丁自体の形のことではなく、刃先の目に見えない領域についてです。

それは、通常の図の刃先をさらに拡大し、そこからさらに拡大を重ねたような感覚の世界です。

炭化物の形はあくまでイメージですが、大きさとしては数ミクロンから数十ミクロン単位。
その極小の世界で、刃先が鋭いか丸いかという話をしています。

こちらは藤原先生が開発されたステンレス鋼材「T3」の顕微鏡写真です。
この小さな石ころのようなものが炭化物です。V金10号や銀3といった主要な鋼材と比べても非常に微細ですが、この炭化物をいかに生かして刃先を作るかが重要になります。

こちらは「銀3」の顕微鏡写真です。
理屈は理解できたとしても、包丁の鋼材自体の粒子が大きくバラバラであれば、そもそもその刃先を作ることが難しくなってきます。そういう意味でも刃先の話は包丁作りからすでに始まっているとも言えるでしょう。
実際、そこまでの研ぎが実用的かと言えば、使う料理人の腕も一流でなければ使いこなせないため、一概には言えません。ただ、私たちはそうした領域を前提に議論しているのだと知っていただければ、ひとつのエンターテインメントとしても楽しめるとも思います。
諸条件を考えれば、同じような状態を完璧に真似をするのは困難だと言わざるを得ませんが、この視点を持っているかどうかで、研ぎに対する向き合い方や解像度は全く別物になるでしょう。
