YouTubeに溢れる食材の切比べや切れ味の比較動画はただのエンタメではないのか【コメント返信】

先日、YouTubeにこのような興味深いコメントをいただきました。

最近YouTubeで切れ味の比較動画をよく見かけますが、多くはステンと鋼による切り比べや砥石の粗さでの味の変化のみの検証です。

ただ、実際には食材の種類や状態、調理方法などによってももちろん味は変化するとは思うのですが、そうした前提条件が揃っていないまま、表面的な条件だけを真似して検証した場合、どれほど結果に再現性があるのか気になっています。

もし各条件の組み合わせによって結果の方向性が大きく変わるのであれば、どんな条件で比較を行ったのかを明示しない限り、得られた結論はその瞬間だけの一時的な答えになってしまうのではないかと感じています。

エンタメとしては面白いと思いますが、その結果をもとにこの鋼材が良いですなどと断定的に語るのはどうなのかと少し疑問に思っています。

最後に、魚を例にした場合、漁獲から調理をして口に運ぶまでで、どの工程が味に大きく影響しやすいのか、またどれほど繊細な部分までが味を左右するのかにも興味があります。お教えいただけますと幸いです🙇‍♂️

確かに最近は切れ味の比較動画などをよく見かけるようになりました。

もちろん切れ味については、藤原さんが「切れ味による味の変化」を科学的に解析し、数値として証明してきた第一人者であり、日々研究を行っています。

最近では、その切れ味を異常なほどにまでこだわった「NOMI RESTAURANT」などの影響もあり、切れ味という概念が世の中に浸透してきているように感じます。

その中で「切れ味がもたらす味の違い」について多くの方が興味を持ち始めている印象がある一方で、発信においては「とりあえず切れ味について語ったり切り比べをすれば伸びる」という風潮があるようにも感じており、どこか雑に消費されているような印象も受けます。

目次

YouTubeに溢れる実験動画

鋼とステンレスの切り比べや、天然砥石による味の違いなど、様々な実験動画をよく見かけますが、ほとんどの動画はコメントにある通り、前提条件が全く整っていないことに問題があるように感じます。

例えば、魚の種類・包丁の種類・鋼材の種類・砥石の種類・研ぎ方など

このように大きな条件があったとします。しかし、ほとんどのYouTube動画では「鋼材の種類」と「砥石の種類」の詳細以外はハッキリと伝えないか、そもそも気にしていないという場合がほとんどです。

その他の条件によって結果が大きく変わる場合、その実験は「包丁によって味が変わる」という表面的な結果は分かりますが「この鋼材だからこの味になる」という結果にはほぼ意味が無いといえます。

例えば、A魚ではA砥石を使うと味が濃く感じるが、B魚だと味が薄くなる、という事実があるとします。そこで、A魚での実験のみで「A砥石のほうが刺身は美味しくなる」という判断は、目の前の事実としては正しいように見えますが実際は正解ではないと言えます。

さらに言えば、その包丁や砥石の材料が同じだったとしても、製造方法や仕上げ方によって差はでるはずですし、同じ魚でも「獲る場所」「締め方」「処理の仕方」など、私たちが思っている以上に結果に影響を与える条件が数多くあるはずです。

その条件がプラスの関係値ではなく、掛け算や引き算にもなり得る場合、方向性すら当てはまらないこともあるということです。

だからこそ、多くの実験動画は「実験ではなくただのエンタメでしかない」というのはその通りかもしれないと感じました。

実験の難しさと疑問

実験というと、イメージ的にはスーパーで買ってきた食材とそこらへんで売っている包丁でもできそうですが、たとえ違いが出たとしても変数が多すぎるので、確実な答えにはなかなかたどり着かないようには感じます。

さらに言えば、藤原先生などがやられている実験は、その他の条件がほぼ100点というような異次元なレベルに整えられた上で、刃物の状態でどこまで変わるのかを検証されているのだと思います。その状態というのも白紙か青紙かというおおまかな話ではなく、もっともっと細かい条件での違いです。

なので、他の変数を限りなく固定できた場合のみ、刃物がどのような影響を与えるかという問いに対してもっと具体的な答えが出せるはずです。

そのような前提条件の説明があったうえで「こういう結果になりました」という動画であれば非常に有意義で素晴らしいものだと思います。しかし、中途半端な実験で「この鋼材のほうが美味しい」と言い切ってしまうのは、それなりの責任が伴うと感じます。

例えば「Aの包丁を売りたいから、Aのほうが味が濃く感じますね」と言うことも簡単にできてしまうからです。知識のない方からすれば、それが正しいと思い込んでしまいます。

だからこそ、単なるエンタメとしての比較と、仕事の現場で通用する真実とを混同せず、情報の裏側にあるものを正しく見極めることが必要不可欠だと思いました。

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